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ガドの言葉に、俺は苦笑して頬を掻く。
そうかもな。俺は、元々若い産まれたばかりのような年齢では無いし、性格的にこうして計算して動く事が多い。
そのせいか小さい時から子供っぽくないと、良く言われた。
「ま、ガドには良いかな。俺はさ・・・この世界の者じゃ無かったんだ」
「は?」
「つまり、俺は別の世界で医者をしてたんだ。気がついたら、こうして龍の身体の中にに、居たんだよ。どうして、こうなったのかは俺にも判らん」
「は?え?つまり、ユーイは、別の世界で生きてたと?医者だった?あ!だから、薬師としての知識が多いって事なのか?え?別の世界って別の世界なんて有るのか?」
俺は頷いて言った。
「マスターのあの数字には驚いたんだがな。俺は向こうの世界では医者で32だったんだよ。
だから、こうして小さな身体に入ってても子供らしい行動なんて、俺には無理」
アングリと口を開けて俺を見るガド。
「な・・・・32なんて、結構な親父じゃんか。まさか、結婚して子供まで居たのか?」
俺は眉を寄せて言う。
「こっちみたいに、結婚は早くねえよ。向こうは魔法が無くて技術が進んでてな。寿命なんてこっちみたいに短くないんだ。人間の寿命はな。100年生きた人も結構な人数居るぞ?
平均的にでも、80以上は有ったしなあ。こっちは、きっと平均化すれば、50にも満たないだろ?だから、結婚は早いんだ。子孫を残すためにな。当然の反応だ」
俺の言葉に、目を見開くガド。
「な?そんなに長いのか?何で?魔法が無い?そんな世界なんて有るのか?」
ガドの言葉に頷いて俺は続ける。
「俺の居た向こうの世界はな・・・・魔法の元になる魔素と呼ばれるものが欠片もない世界なんだ。だから、魔法も無いし、同時に魔物も龍も精霊も魔人も獣人も居ない。知恵のある生き物で繁栄してるのは人間だけ。そんな世界だ」
唖然っと口を大きく開けたまま言うガド。
「はあ?人間だけって・・・・・そんな世界が有るのか?それで、成り立つのか?」
肩を竦めて俺は答える。
「事実、俺はそんな世界から此処に来たんだ。最初は何が起こったか判らなかった。
けど、今は思う。俺はこの世界の為に向こうで医学を学んだんだってな。あの知識をこっちに持って来る為に俺はガムシャラに勉強したんだって思うんだよなあ。
こっちに来て確信したんだ。あの知識は向こうでしか手に入らない物だ」
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