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オルセーヌの戦いは、帝国軍とエビラ軍が互いに数万人の犠牲を出しながら、ついに決着に至らなかった。
ただ、ヴィスカール達の評価は著しく上がった。
半ば一方的にエビラ軍から押し込まれていた戦況が、五分にまで持ち直したのである。
特にイルフェス将軍は、同じビッフェン侯の配下のよしみもあり、随分ヴィスカールを立てた。
また先の夜襲以降、ヴィスカールの部隊はイルフェス将軍の本隊と合流し、十分な結果を残した。
二十歳そこそこの若い隊長としては、見事な活躍と言えた。
だが、当の本人は、あまり表には出さないが、少し落ち込んでいた。
彼は今までほとんど、部下を戦闘で失ったことがなかった。
自分の何が間違っていたのか。
常に最前線を駆け回りながら、そう考える日々だった。
例の夜襲以降、ディマン・アッカドと合いまみえることはなかった。
オルセーヌの戦場は広大で、両軍合わせて二十万もの兵がいる。
ヴィスカールはその五百、アッカドは二千に過ぎない。
どこで戦うかというのも、特に権限がない。
そのうち互いに疲弊し、合意停戦の上、撤退となった。
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