第1章

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 ヴィスカールの部隊がウツケールに帰還したのは、その年の年末だった。 雪がちらほら降っていた。  帰還後、ヴィスカールが最初に行ったのは、戦死した部下の遺族への弔問だった。 異例中の異例であった。 罵倒もされ、泣き崩れる家族や恋人もいた。 それでもヴィスカールはじっと耐え、全員の遺族に会った。 彼は口下手で、言葉も作法もなっていない。 ただ、 「俺の指揮が悪かったから殺しちまった」 と、全員にそう詫びた。  ヴィスカールは、ヒューイと共に用兵学者のブルザスに相談した。 「何がまずかったのか、教えてくれ」  その請いに対し、ブルザスは丁寧に状況を聞き、一点指摘をした。 「アッカドが君達より明らかに優れていたのは、君達が戦場に入った丘、ここに戻ってこられたということだ。  ヒューイ、君の作戦はそう悪くない。  ヴィスカールの率いる強い部隊が奇襲を掛けて、帝国軍本体を助ける。  そういう着想は、寡兵で結果を出す為には、一定程度妥当だろう。  だが、定点の見張りを排除した時点で、油断したのかもしれない。  アッカドは、定点の見張りを置いたからと言って油断せず、恐らく動的な周辺監視を続けていた。  だから戻ってきたというのが、大体の線だろう」
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