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『ありえないわね。』
あれから毎日、人間は私の畑に
来るようになった。
鬱陶しい。しかも腹立たしい事に、
あの人間は毎日笑顔で私を迎える。
まるで私を待ってたかのように。
そして私は、紙に書いて聞いてやった。
「私に痛めつけられて、怖くないの?二度と来たくないとは思わないの?それとも、痛めつけられるのが嬉しいのかしら。」
と。
返事は早かった。
人間は首を横に振るよりも先に、
紙に字を書いて私にこう伝えた。
「凄く怖いよ。でも、こうやって話してくれてるから、痛さに比べたらどうってことは無いよ。」
と。
馬鹿ねこの人間は。
そのうち私に、
殺されるかもしれないのに。
私は紙に「私は今すぐにでも、貴方を殺そうと思えば殺せるのよ?」と書いて人間に見せた。
すると人間は。
「殺せはしないさ、だって貴女は優しい人だから。」
と、私に笑顔で書いた紙を見せた。
私が優しい?私がこんな人間に対して?
ありえない。
私は予想外の返事を見て混乱し、
その人間が居る所を走り去った。
『そんな事しないで。』
また、人間はいつもの場所に居た。
今日の私はとても機嫌が悪い。
そんな事も知らず、
人間はいつも通りの笑顔を見せる。
腹立たしい。
そして人間は私の顔を見るや否や、
「今日、機嫌が悪いの?」
と、紙に書いて私の図星を突いてきた。
人間のクセに。
私は「そうよ、だから手が滑って貴方を今にも殺しそうだわ。」と、書いて人間に見せた。
そして昨日と同様で人間は、
殺せはしない、貴女は優しい人だから。
と、書いて私に見せる。
私の何が分かる。たがが人間が。
苛立ちもピークに達してきた。
本当に殺してやろうかと思った瞬間、
人間は車椅子から立ち、
私に近づいてきた。
その足取りはとても危なっかしくて、
見ていられない。
まぁ私がやったんだが。
何をするかと警戒していたら、
人間は私の隣に座りこんだ。
そして人間の彼は、
そっと、私の頭を優しく撫でた。
続く
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