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「高校野球かぁ。甲子園を目指して頑張りたいけどやっぱり厳しいんやろなあ」
2006年4月。京都のとある高校の入学式。
桜の並木が綺麗な構内を歩きながら、僕はこう思っていた。
僕が入学したのは大学までのエスカレーター校の附属高校である。
中学受験をして大学の附属中学に入り、その流れで高校に入学した。
京都市の北の外れ、比叡山の近くにあるのんびりした校風とは真逆のイメージの高校野球の世界に足を踏み入れるかどうか、僕は迷っていた。
中学時代のチームメイトはハンドボールやバスケットボール部に入部する奴もいた。
自分も一度きりの高校生活を野球以外のスポーツに捧げてみようかななんて思ったりもした。
しかし、僕にはどうしても野球を諦められない理由があった。
思い返すと悔しさしか出てこない。
そんな出来事があった。
時は高校入学の約一年前。
2005年の8月。
僕は中学最後の夏の大会。
背番号5番を付けた僕は京都の山科にあるグラウンドに立っていた。
京都市大会の3回戦。
相手は強豪校ではなく、互角の相手。
1回戦と2回戦を相手に大差を付けて勝っていたので、この試合も勝てると思っていた。
しかし、僕のあるプレイがチームの明暗を分ける。
3回のウラ、相手チームの攻撃。
点数はお互いにゼロ。
緊張感のある試合展開。
ノーアウトランナーは一塁。
相手はバントでランナーを進めて来ると思っていた。
僕はバントを警戒して少しサードベースより前よりに守る。
1球目はボール。相手は余裕を持ってボールを見送る。
2球目もボール。
カウントは0ストライク2ボール。
3球目。
ど真ん中のストレートがキャッチャーのミット目掛けて投げ込まれる。
僕はバント対策の為にピッチャーが投げると同時に前に出る。
しかし、相手はヒッティングを選択しバットを思い切り振り抜く。
ボールがバットに当たり、自分目掛けて飛んでくる。
普段ならなんでもなく処理できるサードゴロ。
しかし、バントの事で頭がいっぱいだった僕は飛んで来たボールを処理できず、グローブから弾いてしまう。
ボールを拾い、一塁に投げたが時既に遅し。
相手は一塁にたどり着いていた。
「やってしまった。なんでこのタイミングで」
後悔しかない気持ちを切り替えようとする。
しかしいつもと様子が違う。
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