第1章

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そんなきれいな校舎を見下ろしながら、少し早足で廊下を歩いていく。 うちの学食はなかなかうまい。そしてもちろん安い。だいたいワンコインで、成長期の男子の胃袋も満たしてしまうボリュームもある。 だからもちろん、大人気だ。 いくら落ち着いた生徒達とはいえ、このお昼休みという時間は性格も変わる。 戦争だ。 これは、午後の授業、という名の生き地獄をいかに乗り切るかという、我々の命運のかかった大戦争なのである。 しかし、焦ってはいけない。粛々と、冷静沈着に、歩みを進めなくては。 何せ今日は 「なあ、三宅。」 「なに。」 「今日のメニューってなんだっけ?」 「ハンバーグだよ。」 そう。ハンバーグ! ハンバーグこそ人類の宝! 僕はハンバーグとラーメンさえあればどんな環境でも生き抜いていける自信がある。 ハンバーグ。最高。 「あー・・・・・だからか・・・・・」 「え?」 中野のつぶやきに、俺の脳が光速さで回転をはじめる。 コンマ1秒で、廊下の窓に張り付く。そこから見える学食の入口を見下ろす。 そして死んだ。 そこには文字通り溢れんばかりの人混みがあって。 ラッシュアワーなんて比じゃない。 あれだ。某有名遊園地のアトラクションがなんらかの事故で壊滅的な状況に陥ったときに唯一動いているジェットコースターに出来上がるであろう行列。本当にそんな感じ。少なくとも僕にとっては、それほどの絶望的な景色が広がっていた。 「ハンバーグ・・・・・・・・・・」 「・・・・・あー・・・・・まあほら、あれじゃん。ちょっと予想はしてただろ?春って新入生が学食に来るしさ、混むし。うん。」 「ハンバーグ・・・・・・・・・・」 「おーい。三宅くーん?」 「ハンバーグ・・・・・・・・・・」 「いや、正直無理だって。あれは。パンにしようぜ?」 「・・・・・うん・・・・・」 「ほら、明日はオムライスの日だろ?お前オムライス好きじゃん。」 「うん。」 「復活はや。んじゃ中庭行こうぜ。」 「おっけー。」 くるりと踵を返し、中庭に向かう。 少し後ろ髪をひかれつつ、心の中でハンバーグに一週間の別れを告げる。 さようならハンバーグ。また会おう。
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