第1章

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「君が三宅くんですね!」 「そうです。」 そこで猫目はなぜかすごく嬉しそうに目を細めた。ふわふわの柔らかそうな髪をくしゃっとおさえ、照れたように笑った。と思えば、両手を正座した膝の上に置き、背筋をぴんと伸ばす。そのふざけた姿がおもしろくて、一気に肩の力が抜けた。慌ててこちらも正座を組む。 「噂はかねがね!」 「それはそれはー。」 「わたしはミヤタ サヨと申す!お宮の「宮」に田んぼの「田」!名は小さな世界と書いて「サヨ」と読みますが、心はでっかく構えておりやす!」 「そのようで!」 「以後お見知りおきを!」 「ははー。」 「何やってんのお前ら。」 お互いに土下座をするような姿勢から直ると、ミヤタサヨはまた楽しそうに笑った。 よく笑う子だな、と思った。 「ま、冗談はさておき。三宅くん、改めてよろしくね。あは、びっくりさせてごめんね。」 「こちらこそ。正直寿命が3日は縮んだよね。」 「あはは!だいぶ繊細!三宅くん、噂通りってかんじ。」 「なにその噂。気になる。」 「ゆうちゃんからいろいろ聞いておりますからね。」 「・・・・・・・・・・」 「いや、俺はなんも言ってねーよ。」 無言の圧力をかける僕と、明後日の方向を見て逃れる中野とを交互に見つめ、彼女はまた笑った。 「あはは!うそうそ。ゆうちゃんが1発で気に入った友だちって言うから、相当良い人なんだろうなって思ってたの。予想通りだったなーって、ただそれだけ!」 「おお?ゆうちゃんってばそんなに・・・・・」 「きもいからやめろ。」 「いやーん。」 「いやーん。」 なんだかすっかりミヤタサヨとは意気投合してしまった。そんな僕たちを面倒くさそうに眺め、 「言うの遅いけど、こいつ俺の幼馴染みみたいなやつ。家が近所で、それこそ保育園のころからの知り合い。」 なんて話を逸らしてみせた。 それに素直に感心し、幼馴染みって本当にあるんだなあ、なんて思いながら改めてミヤタサヨを見つめた。 ぱっちり二重のほんの少し釣り上がった目は本当に猫そっくりで、いたずらっぽい印象を受けるが、よく見ればハーフのような整った顔だった。長いまつげ、口角の上がった小さい口。美人というよりも、愛嬌のある顔といった感じ。こんな整った人間ばかり産まれる中野の地元ってどんなところなんだろう、と疑問に思った。
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