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ディディーの顔は張り出された顔よりも痩けていた。髪質もがさがさ、肌も髪同様がさがさだ。疲れが顔、いや、ディディー全体に出ていた。まるで、疲れを凝縮したようになっていた。
「水、ないかな...」
のそのそと霧がかかる頭で水の在処を思い出そうと思うが思い出せない。水が欲しいのに無い。見つからない。
記憶も 見つからない。
ディディーは、記憶喪失になっていた。
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フラッダは、自分の事が好きだった。
鼻筋がとおり、全体的に引き締まったキリリとした顔。
薄く淡い色をした唇。
そして、珍しい紫色の目。
歩くだけで絵になり、その目に写された女はだれもが自分を盗まれる。
まさに、神から与えられた、良くできた顔だった。
フラッダは、そんな美少年の自分が好きだ、自分だけが。
フラッダは、他人が好きではない。
なぜなら、みなフラッダに無理な理想をだくからだ。
フラッダは、美少年だから、みなフラッダに期待する。魔法が使える、どこぞの貴族のむすこでお坊ちゃん、すでに、何億もの金を持っているなど、顔に見合う地位や家庭を持っていると思うのだ。
そして、その理想をフラッダに押し付け、羨む。
その羨みは、心に刺さる言葉となりフラッダに襲いかかる。
お前は、神に愛されるために、前世で体を売った汚れた腐人だと言われ、フラッダは、悲しかった。
フラッダは、貴族でもなんでもない。
魔法の使えぬ下級層の人間だ。前世なぞしらぬし、金だってちっとも持ってない。
勝手に膨らむ理想を押しつけられ、理不尽なことを言われ続けたフラッダは、他人がすべて汚く見えるようになった。
すべて、何もかもが
フラッダには、歩くゴミ。
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