台風の目って俺のことか!?

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「……好きな奴、いんのか?」 窺うような声音で柚木が言葉を紡ぐ。彼の少し緊張した表情に、心なしか不安のようなものが見て取れた。 たった一人置いてけぼりにされてしまう子供のように、その瞳は寂しげに揺れていた。 もしかしたら彼は、俺に恋人や好きな人ができてしまったらそちらにずっとかかりきりになってしまうのでは、と懸念しているのかもしれない。 漸く学友というものができたのに、また一匹狼という孤独に苛まれる日々に戻るのかもしれないと、自惚れかもしれないが、そんな不安を抱いているのだろうか。 なんにせよ、純真無垢な王道転校生が言える答えなんて決まってる。 「何言ってんだ!勿論みんな大好きだぞ!?」 ニッコリ屈託無く笑ってみせる。まぁ多分口元しか見えてないだろうけど。 ピュアですよ〜!ってオーラをなんとなく感じ取ってくれればそれでいい。 「まぁ、りいとならそう言うと思ったよ……」 心なしか、なんだか生暖かいような目で竜胆がそう告げる。 これは例えるならば、はしゃいでる子供を見守る親みたいな眼差しな気がする……。 子供扱いされてるのが明確に思い知らされてしまって、なんだかちょっぴり恥ずかしくなった。 そんな竜胆とは対照的に、柚木は「そうか……」とだけ呟くと良かったと言いたげにホッと息を吐いていた。
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