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「お……おま、おま……っ、お前ええぇ!!
嘘だろ!?いや聞いてたよな、俺の話!?捕まる訳にはいかないんだって!!なのになんでどうして……!
捕まえちゃった〜じゃねぇよ!!後ろからとか卑怯だろ!正義の鉄槌喰らわすぞジャスティスパンチを!!」
「りいと、悔しいのはわかるがちょっと落ち着けな。どうどう」
「ジャスティス……パンチ?」
何かなし遂げた後のような、穏やかな笑顔を浮かべた月村の胸倉を引っ掴んでガクガクと奴を揺さぶる。
それを宥めるように、俺の肩をポンポンと叩く竜胆。
笹塚は俺が言ったジャスティスパンチが気になるようだが……今はそれどころではない。
「あああぁぁ……今まで俺は、一体なんの為に必死に逃げて……!」
俺がここまで逃げてきた努力が水の泡に……。それになんと言っても、折角笹塚の役に立てると思っていたのに……結局それも実現できない夢となってしまった訳だ。
笹塚に対する申し訳ない気持ちと、自分の頑張りを全て無駄にされた怒りとで俺は頭を抱えた。
何か喪失感のような物と共に、今まで溜まりに溜まっていた疲労が一気に噴出した様な気がした。
それからの事は、正直あまり記憶に残っていない。
ショックのあまり、鬼ごっこの結果発表の間もずっと呆然としている俺を笹塚と竜胆が心配そうにしながらも支えてくれた事と、ひたすらに月村がご機嫌に鼻歌を歌っているのを殴りたいなぁと思った事くらいしか覚えていない。
月村……いつか、殴る。
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