王道転校生と鬼ごっことその後日

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新入生歓迎会の鬼ごっこが終わったその日、俺はシャワーだけ浴びてベッドにダイブした後、泥のように眠った。 余程疲れていたのだろう。 20時頃から入眠して、翌朝の7時頃に鳴らされたチャイムの音で起こされるまで、俺はぐっすりだった。 そのお陰か、目覚めはかなりすっきりしていて気分が良い。 いつも笹塚と竜胆と柚木が迎えにくる時間よりも、かなり早い時間に鳴らされたチャイムに頭を傾げながら玄関へと向かう。 こんな朝早い時間の来客なんて珍しい。 もしかしたら自分ではなく、同室者の向坂(さきさか)への来客かもしれないな。と思いながらも、玄関の扉を開けて相手の姿を確認する。 「……あれ?」 扉を開けたその先には誰も居らず……扉の取手の部分に、小さな紙袋が提げられているのみだった。 その紙袋には、神崎りいと様へとなんだか改まったように、俺の名前が書かれていた。 送り主は書かれておらず、監視者からの可能性も警戒しながら、紙袋をソッと手に取った。 自室に戻り紙袋の中身を広げてみると、お高そうなクッキーの詰め合わせと手紙、それからしっかりとした造りの箱?のような物が入っていた。 真っ先にクッキーに意識が向いてしまったものの、流石に誰からか分からない物を食べる勇気はないので先ずは手紙に目を通す事にした。 手紙の出だしには、生徒会副会長の若月翠ですとしたためられていた。文頭で真っ先に名乗るとは、律儀な彼らしいというか。 しかしお陰で、手紙の内容も把握しやすかった。 案の定昨日の鬼ごっこの件についてだったのだが、俺の眼鏡をそのまま持ち去ってしまった事、友達の俺に対して失礼な事をしてしまった等々、その内容の大半が謝罪によるものだった。 せめてのお詫びにと、前に俺が好きなお菓子だと言っていたクッキーを同封してくれたらしい。 副会長からの品ならば問題ないだろう、と早速クッキーを一つ摘んで口の中に放り込めば、上品なバターの香りがふんわりと口の中に広がった。
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