王道転校生と鬼ごっことその後日

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頭を冷やしたいからと、暫く俺と距離を置きたいという旨も記されていたが、決してりいとを嫌いになったから避けているという訳ではないのでどうか気に病まないでほしい。とも書かれていた。 サクサクと口の中で軽やかな音を立てるクッキーは、いつも自分が食べている物に比べて格段に美味しい。……その筈なのに、何故か味気無く感じた。 頭を冷やしたいというのは、俺を押し倒した事に対する罪悪感からなのか。それともまた別の理由があって、俺と距離を置きたがっているのか。 俺がいくら考えたところで、正解が分かることはないのだが。 それでもつい考えてしまうのは、俺がこの学園に来てから毎日会いに来ていた副会長の姿が無くなる事を、実は少し寂しいと感じてしまっているからなのか。 それとも王道転校生として、これが望ましくない展開だからか。 最後に残されたしっかりとした造りの箱のような物を開けると、中には俺の王道転校生グッズの眼鏡が入っていた。 変装用のただの伊達眼鏡なのに綺麗に手入れしてあるし、この眼鏡が入っていた箱のような物もどうやら眼鏡ケースらしい。それもまた高級そうな。 副会長が、この眼鏡を丁寧に大切に扱ってくれていたであろうことが節々で見受けられた。 わざわざこんな朝早い時間に眼鏡を届けたのも、この眼鏡がないと困るだろうという副会長の気遣いからなのだろう。 副会長が友人を心から大切にする人柄なのだと、今回身を持って知ることになったが、やはり合わせる顔がないからと距離を置かれることに関しては納得できないものがあった。 大体こんな手紙だけで、暫く会いたくないですと言われて、はいそうですかって素直に受け入れられる訳がない。 となれば、俺の心は既に決まっていた。これは直談判しにいくべきだ、と。
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