王道転校生と鬼ごっことその後日

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……そう心に決めたまでは、よかった。 ただ、本当に一目見ることも出来ない程に避けられていると分かるまでは。 「…………ここにもいない、か……」 「りいとーどうした?」 ポツリ、と一人呟いた言葉を笹塚に拾われて、思わずドキリとしながら「なんでもない!」と答えた。 ぐぅ、と自分のお腹が小さく鳴るのが聞こえて、目の前のスプーンを力なく掴む。 この学園に来て初めて食堂で頼んだのが、オムライスだった。 王道転校生といえばオムライスだよな、なんて安直な考えで頼んで、あまりの美味しさに周りも気にせず夢中で食べていたのを思い出す。 それと全く同じ物のはずなのに、今目の前にあるオムライスは、当時の輝きを失ったかのように色褪せて見えた。 こうして学園に来た当初と同じ事をしてみれば、また同じように副会長が現れるんじゃないか?と期待してのことだったのだが……流石にそう上手くはいかないようだ。 「はぁ……」 スプーンで掬ったオムライスを口に入れるよりも先に、溜め息が出てきてしまった。 自分の行動が正しいのかもわからないまま、このまま突っ走っても良いのだろうか……なんて弱気が、靄のように心に纏わりつく。 「元気ねぇな、悩みなら俺が聞いてやろうか?」 俺の心の靄を散らすように上から降ってきた声に見上げれば、ニッと笑ってみせる会長の姿があった。 「りいとが元気ないなんて、変なのー!ねー明?」 「そうだねー黎」 二人して首を傾げる仕草をする双子の姿も目に入る。 その後ろに、チャラ男会計やわんこの皮を被った狼書記くんが居るのも確認できた。 やはり食堂に来れば、生徒会御一行様もいらっしゃるだろうと予想した通りだった。 ただしかし……やはりと言うべきなのか。辺りを見回してみても、副会長の姿だけは見当たらなかった。
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