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「翠は……?」
「……なんだよ、俺が居るのにあいつが気になんの?」
副会長の所在を問えば、何故か不機嫌そうな声で会長に質問し返された。
何を当たり前の事を言っているのだろう、と思いながら「うん」と頷いたら、会長がピシリと石のように固まった。
そりゃ会長と副会長は別の人間なんだから、代わりなんて務まる訳ないのに。
用事があるのは副会長に対してであって、会長はお呼びではないのだ。
なんて思っていると双子の兄、黎がお腹を抱えて笑いながら、俺の問い掛けに答えてくれた。
「ぶはは!会長どんまーい!
翠ちゃんはねーお腹空いてないからって生徒会室でお仕事してるよ」
「生徒会室……」
基本的に生徒会室は、一般生徒は立入禁止とされている。
要はそこに引き篭もっていれば、俺と顔を合わせずに済む訳だ。
王道転校生ならばそんなこと気にせず生徒会室に乱入しに行くのかもしれないが、ルールを破る事も度を過ぎれば秩序が乱れ過ぎる。
学園を崩壊させるような事態になるのは、俺の望みではないのだ。
つまりは打つ手なし、ということになる。
やはり副会長の気が済むまで、この状態のままかもしれないな……と俺が気落ちしていると、横からにゅっと伸びてきた手に俺の手ごとスプーンを掴まれ、そのまま上に乗っていたオムライスを掻っ攫われた。
「お、俺のオムライス……!」
なかなか手を付けなかった俺も悪いかもしれんが、人の食べ物を盗るとはなんという不届き者!
食べ物の恨みは怖いんだぞ、と犯人を目で捕らえればそこにはもぐもぐと口を動かしている狼書記くんが。
お前か犯人は。
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