王道転校生と鬼ごっことその後日

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「……もっと、ちょーだい」 俺のオムライスに味を占めたのか、強請(ねだ)るような目を向けつつこちらに迫り寄ってくる狼書記くん。 こてんと頭を傾げておねだりをするその様は、宛ら大型のわんこのように見える。 ……が、この男に狼のように獰猛な一面もある事を既に知っている俺は、即座に椅子を引いていつでも己の身を逃がせるようにと身構えた。 「わんこ書記×王道転校生……!萌える……っハァハァ」 おい殴るぞ腐男子。 視界の隅で俺と狼書記くんにカメラを向けて、遠慮なくカシャカシャとシャッターを切る月村に軽く殺意が湧く。 そうやって喜んでいられるのも今のうちだ……もう暫くすれば、今俺がいるこのポジションがお前の場所になるからな……! 言えるはずのない心の声を月村に向けていれば、俺と狼書記くんの間に柚木が割入ってきた。 「ちけぇ、りいとから離れろ」 庇うように俺を背中に隠しながら、狼書記くんを睨む柚木。 狼書記VS一匹狼の珍しい対立に、愉快そうに双子の黎が囃したてる。 男が男に守られるなんて構図、男としてはどうなんだって気もするが、まぁこれが王道転校生の立ち位置なのだから仕方ないとして。 しかしながら面白くないのもまた事実。だって腐れ腐男子月村の喜んでる顔が、視界にチラチラ入ってくるんだもの。殴っていい? くそぅ、覚えてろよ……お前がこの構図に組み込まれる日が来た暁には、俺が腹抱えて思う存分高笑いしてやるからな、月村ぁ! 今すぐ月村をどうこうするのは諦めてちっぽけな復讐心を燻らせながら、オムライスの乗ったスプーンを掬い上げる。 もういいや……考えるのも疲れたし、早く食べないと折角のオムライスも冷めきってしまう。とオムライスを口に運ぼうとした矢先に、その手をまたガシリと掴まれる。 ……今度は何なんだよ!? 食わせろよ、俺に飯を!!
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