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「…………」
「……お前なぁ、」
言いたくてウズウズする気持ちをなんとか堪えていると、明先輩にネクタイを掴まれてそのままグイッと引っ張られた。
そのままの状態で、耳に口を寄せたかと思うと明先輩は声を潜めて囁いた。
「後で覚悟しとけよ」
「え」
「ニヤついてんだよ、顔が……ばーか」
ウソまじか。全然自覚無かった。
王道転校生がニヤついてるなんてキャラ的にアウトだろ……引き締めろ表情筋!
「お前の考えてる事なんざお見通しだっつの……
どうせ、明先輩の秘密……誰かに言いたいなーでも駄目だよなー……とか思ってんだろ」
「う……」
バレてらぁ。
どうして他人の秘密って誰かに話したくなっちゃうんだろうね。いや、そんなことやらないけどさ。
明先輩に対する後ろめたさから目線をあさっての方向に飛ばしていると、明先輩と密着した身体はバリッと勢い良く引き剥がされた。
そこにすかさず笹塚と会長が割って入ってくる。
「バカお前、油断してんじゃねーよリト」
俺を振り返って呆れたようにそう言う会長に、
「りいとに乱暴するなら許さねぇ」
と、明先輩を睨みながら俺を背中に庇う笹塚。
なんだこれ、乙女ゲームのヒロインかよ。
全く嬉しくないけど、王道転校生になって総受けになるという俺の当初の目的は順調なようで、正直複雑である。
いやというか、今回のは完全に俺が悪いのであって、明先輩が怒るのは当然なのだ。
お互い秘密厳守で、と約束を交わしたにも関わらず、それを裏切るような事を考えてしまったのは俺なのだから。
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