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流石にこれでは明先輩が可哀想なので弁明しようかと口を開いたところで、明先輩がハンッと鼻で笑ってから言った。
「やだー怖いなぁー!
僕、りいとが転びそうになったのを支えてあげただけなのにぃー」
きゅるるんと可愛こぶって言う明先輩に、ギロッと鋭い視線を投げ付けられ、慌てて俺も援護に回る。
「そ、そうだぞ!俺、助けてもらっただけだから!」
「……ほらねぇー?」
また可愛こぶりっ子モードでにこりと笑う明先輩に、最早敬意を示したくなった。
裏表をここまできっちり使いこなすなんてすごいなぁ、と。
そんな明先輩を、会長はなんとも言えぬ顔をしながら見遣ってから俺にこっそりと耳打ちをした。
「リトお前……もしかして、あの双子になんか脅されてんのか?」
「えっ」
脅されているというか……秘密の約束を交わしているという方が正しいというか……。いや、やっぱり脅されてるのも合っているのか……。
そう考えつつも、それをそのまま口に出して言えるわけもないので、適当に笑って誤魔化すことにした。
困った時は取り敢えず笑っとけばいいって、じっちゃんが言ってた。
「何言ってんだよ唯斗!わはは!!」
「リト……、」
そんな俺を見た会長は、真剣な表情で俺の頬を掌で包んだかと思うと、至近距離で見つめながら言葉を続けた。
「俺が助けてやるからな……!」
任せとけ!と、口にはしていないがそんな言葉まで聞こえてきそうだ。
なんか色々勘違いしてそうな気もするが、もう否定するのも面倒臭いのでそのまま放っておくことにした。
取り敢えず顔が近い。美形の顔圧がすごいのよ。
「イヤああァァァ!!」と嘆くような悲鳴が後ろで聞こえる事に、そういえば食堂だったなここ……とふと思い出す。
そして俺のお腹も思い出したかのように、ぐぅと小さく鳴った。
……てか、あれ?スプーンはどこ行った?と思っていれば、会長との間に柚木が割って入ってきた。
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