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「リト、聞け!俺が好きなのは、
……好き、なのは……っ」
あまりにも真剣な表情の会長にこちらも真っ直ぐに見つめ返せば、言葉を詰まらせ見る間に顔を赤くさせていく会長。
こんなギャラリーの多い所で、ファンの多い会長がそんな頬を赤らめたりなんかしたら……あぁほら、案の定周りにいる何人かが鼻血だしたり倒れたりしてるわ。
ご愁傷さまです。
心の中でそう合掌していれば、双子の兄が会長を揶揄いながら間に割って入ってきた。
「もー、かいちょーってばヘタレなんだからぁー!」
「は!?ヘタレだと……っ!?」
「全くさぁ、ヘタレるくらいなら僕の邪魔しないでよねー!
僕はりいとに用事があるのー」
両頬をぷくっと膨らませながら、「ほらどいてどいてー」と会長を押し退ける上林兄。
この人達は俺に飯を食わせる気がないらしい。
腹減った…………。
「でさ、りいとー!さっきの話の続きなんだけどね?」
「…………おう……」
空腹でなんかお腹痛くなってきたので、机にぐでっと突っ伏したまま力無く返事をすればハァと、頭上から溜め息が聞こえた。
行儀が悪い?知らん。
「もー!だったらほら、これなーんだ?」
上林兄が言いながら俺の目の前に掲げたのは、探し求めていたスプーン。
これでオムライスが食える!とそのスプーンに手を伸ばしたものの、ひょいと上林兄に避けられる。
「僕の話、聞く気になった?」
上林兄の言葉にコクコクと頭を上下に振る。
すると上林兄はにっこり笑って「じゃあ僕の話が終わった後にこのスプーン返してあげるね」と告げた。
え、絶望。今すぐ食えないのかよ。
餓死しそう無理。
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