市、殺人妄想癖と虚言症。

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今日も目の前で他人(だれ)かが死んだ。 俺は、『ああまただ。やれやれだぜ』と目の前で無残に散らばった人間のパーツをゆっくりと眼で追っていきながら、命の呆気なさについて生と死の線引に関する勝手な持論を持ち出した挙句つい感情的になってつらつらと泪を零したのだった。 とかいうと他人事のようであって厨二病臭いので言い正すと、 今日も俺は目の前の他人(たにん)を殺した。 ずんぐりむっくりの体が思ったより切れ難く中指を立てながら残った男の胴体にまたがるハメになったのは言うまでもないことで、お前の上なんかに跨がりたくなんかねぇんだが次美女にでも生まれ変わってくるんじゃねぇかって少しは期待してやってんだぜ俺はさ、とか高らかに笑いながら割れたジョッキを腹にぶち込むのだった。 となるわけで、実はそれも語弊があるから更に言い換えると、 今日も俺は脳みその中で他人(ひと)を殺しただけである。 脳みそで繰り広げられたお粗末なワンマンショーに客なんぞいない。あるのはステージ上で真っ赤に散り乱れる肉体を使って妙な音階を奏でる独り善がりなシンガーソングライターのみ。 売れないインディーズバンドでも五人かそこらはいるというのに、ライブハウスは文字通り只の箱に成り下がったわけだ。 これじゃあノルマなんか全然クリア出来ないじゃないっすか。 チケ代はいらないからワンドリンク五百円だけ払ってね、とか言って身内ばかり集めて『今日は俺のために来てくれてありがとー!』と叫ぶしかないのか。 まさにジャイアン・リサイタル。 そういえばこの前見に行った先輩たちのライブがまさしくそれだったわ。パンクバンドの雑なコピーに適度な拍手と歓声、そしてワンコインを送る事に果たして何の意味があったのか是非とも教えて欲しい。ワンコイン。 ああ、あれ一枚で上手い飯食えたじゃねぇかよー。とは、口が裂けても本人たちの前では言えないから大人しく脳みそワンマンライブを続けよう。 俺は拳を突き上げ死体を抱くのだ。 イェーイ! 今日は俺の為に来てくれてありがとう!  今からお前らの体を刻んでいきます!  一緒にぶっ飛んで逝こうぜ! あの世まで!   とステージに立つ俺に目一杯のスポットライトが集められたところで思考に邪魔が入った。
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