第4章

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突然話を振られたことに焦っている様子を見ながら、私は先日のあの時の出来事を思い出していた。 ーーーどうして私は駄目なんですか!? 目にいっぱい涙を溜めて、聞き耳を立てていた私を睨み付けてからその場を去って行った。 その後に見た遊佐先輩の左の頬は、うっすら赤くなっていた……気がする。 顔は、いたって普通の、どちらかというと和風の大人しい顔。 成績は悪くなく、目立つ行動もなく、ひっそり静かに教室の端にいるタイプ。 そんな女の子が、勇気を出して遊佐先輩に告白して、そして大胆にもキスをせがもうとしていた……。 見てはいけない現場を見てしまったせいで、私はあれからずっと、この女の子、石藤さんを直視できずにいる。 それは石藤さんも同じようで、目が合いそうになるとフイッと逸らされる。 悪いのは私だし、仕方がない。 でも、誤解だけはして欲しくない。 確かに故意的にあの現場を覗き見たけれど、私は石藤さんのライバルなんかじゃない。 遊佐先輩のことを好きなわけじゃないから、それだけは勘違いしないで欲しいーー。
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