第4章

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「……あ」 雑貨屋さんの方に、ローヒールの薄いピンク色の靴が、目立つ展示場所に新しく入荷されて置かれていた。 派手すぎず、桜の花を散らしたようなふわりとした色が、私の心を急激に捉えた。 足の甲部分に白いフリルでできたリボンが結ばれており、小さい頃に遊んだ人形が履いていた靴が、そのまま本物になったような素敵な靴だった。 ……可愛い……!! ショーウィンドウに両手をペッタリとつけながら、私の目は釘付けになった。 可愛い靴は他にもたくさんあるけれど、これほど惹かれた靴は初めてだった。 私の理想の、〝 女の子の靴 〟。 昔読んだ絵本の、シンデレラが履いていたガラスの靴に憧れたこともあったけれど、それより何より大好きなピンク色とフリルのリボンのこの靴が、私にとっては何より輝いて見える靴だった。 欲しい……! でも、私なんかに似合うわけない……。 ショーウィンドウに映る自分は、ショートすぎる髪に日焼けしたヒョロヒョロの手足。 どこから見てもこの靴が似合いそうな要素は欠片もない。
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