第4章

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今までも、可愛い服や小物など、幾度となく買おうか迷ったことがあった。 だけど、買ったところで着る勇気も使う勇気もない。 友達に見られたらなんの冗談かと笑われるのが目に見えている。 欲しい気持ちをグッと堪えて、家に帰って美味しい夕飯を食べて忘れる……そんな自分にも慣れていた。 ……それなのに。 この時ばかりは、諦める決心がつかなかった。 胸がドキドキするほどの理想の靴。 ーー履いてみたい。 足を入れて、ピンク色に包まれたい。 ちゃんとした女の子の姿の、可愛い自分になってみたい……! その時ふと、自分でも不思議だけれど、遊佐先輩の顔が頭をよぎった。 私がこの靴を履いた姿を見たら、先輩は……遊佐先輩は、なんて言うだろう。 『似合うよ』 目を細めて、柔らかそうな髪を揺らしながら微笑んでくれる先輩の顔が思い浮かんだ。 この靴よりキラキラした笑顔で、遊佐先輩は私の女の子の部分を否定する言葉なんて言わないだろう。 何故だか、そう確信する自分がいた。
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