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天気は晴天。
暑いくらいの日差しに目を細めて、私は後ろにいる遊佐先輩のことを意識しないようにしながら親子猿がじゃれ合う姿を見ていた。
「姫子……色気なぁい」
奈々美がぶぅたれる。
「でもさ、今日の姫子、いつもより可愛い気がする。 珍しく私服なのにスカートだし……気分転換?」
「!」
指摘されて、実は家を出てからずっとスースーしていた足元を動物園のパンフレットでパッと隠した。
「に、似合わないよね!? うん、自分でもおかしいと思ってたんだ! 動物園に行くからおこずかいちょうだいって言ったら、お母さんがデートだと勘違いして無理やり履かされて……!」
全部、口からのでまかせ。
本当は自分で選んで自分で着てきた。
でも、ヒラヒラしたようなものじゃなくデニムのスカートだし、上はいつもと変わらない素っ気ないTシャツだけれど。
「えー!? 可愛いよ! 姫子はスカート似合うって前から言ってるじゃん! パンツだけじゃもったいないよ!」
優しい奈々美。
そんなこと言ってくれる女の子、奈々美しか知らない。
それにしても、本当に自分はどうにかしていると思う。
スカートなんて一生履かないと思っていたのに。
朝目が覚めて、一番に思ったのは……
遊佐先輩に、可愛いって思われたい。
っていうこと。
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