10人が本棚に入れています
本棚に追加
僕を乗せた車は、正面入り口ではなく裏口の方へと向かっていった。すると、鉄の門が既に開いており敷地内に入ると大勢の制服の警察官や背広姿の職員逹が僕を迎えてくれた。当然だが、全く嬉しくない。後部座席のドアが開けられ、外に出ようとするがやはり出ずらかった。大勢の視線の集まる中、手錠を掛けられた僕は刑事さんの連行に従い建物の外階段を慎重に一段一段昇っていき、3階から建物内へと入っていった。狭い廊下を進むと広い部屋へと抜け、そこには沢山の机、そしてその上にはパソコンや決して整理されているとは言えない数々の書類などが、無残に置かれていた。その部屋は「刑事課」であった。待機していた、数人の刑事さんの嫌な視線を感じながら、さらに奥にある小さな部屋へと案内された。そこは「取調室」であった。奥側の椅子に座るよう指示され、静かに腰を降ろすとすぐ様、手錠を外してくれた。静かにその部屋で待っていると、一人の刑事さんが入ってきて、これから取り調べを行うことを告げられた。まず始めに、僕には黙秘権があることが言い渡され、言いたくないことは言わなくても良いとのことも告げられた。そして、いよいよ僕が逮捕された理由が明らかとなる。その真相とは、この日の午前中、とある70代の女性宅に息子を名乗る男から「早急に現金500万円を用意して欲しい、現金は会社の上司が受け取りに行く」との電話があったらしい。不審に思った女性が息子に連絡をすると、詐欺であることに気付き、警察に通報した。そして、女性は警察と連携し電話の男と話しを進め待ち合わせをした。待ち合わせ時間に、その場所へ向かうと電話の男の言う通り一人のスーツ姿の男性が立っていた。そう、この男性こそが僕である。ここからは僕が鮮明に覚えている。僕が、この仕事を始めた動機やここまでの経緯などは、また後章においてその全てを詳しく説明させて頂こう。僕は、ある人に指示されこの時間にこの場所に立っていた。すると、正面から60代~70代の女性が向かってきて、声を掛けてきた。「○○さんですか?」と声を掛けられ、僕は「はい!」と答えた。女性は、手提げバックから銀行の現金入れ紙袋を僕に渡してき、中身を確認して欲しいと言ってきた。
最初のコメントを投稿しよう!