1、逮捕当日~7月3日~

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当然僕は、嫌でも「はい」と答えるしかなかった。その場でまた、手錠を掛けられ二人の刑事さんに連行され、長時間居座っていた取調室を後にした。入ってきた道を戻り、外階段に出ると辺りはすっかり暗くなっていた。今度は、2階から建物内に入り狭い廊下を進み、鉄の扉を1枚、2枚、3枚と抜けると行った先は「留置課」であった。ここで僕の身柄は、留置課に引き渡されることとなった。頑丈そうな鉄の扉が開かれ、中から看守の職員が出てき、僕は中へと入った。扉が閉まる前に、刑事さんは「ゆっくり休んでね。」と言った。「ゆっくり休める訳ね~だろ!」と思ったが、表情は変えず「はい」と答えた。中へ入ると、また廊下になっていて鉄の扉があったり、扉のない部屋があったり少し迷路みたいな複雑な構造であった。扉のない部屋へと案内されると、約2帖ぐらいの部屋に救急用のベッドがおいてあり、そのベッドに座るように指示された。そして、2人の看守さんが入ってきて、まず今着ている服を脱いでパンツ一枚になり、用意されていた浴衣を着るように言われた。そして、身長、体重を量った。この時の僕の身長は、166.5㎝、体重は79㎏とかなりポッチャリとしていた。その後、脱いだスーツや所持品などを全て一つ一つ念入りにチェックし書類に記入していて、その作業は一時間以上続いたが、ようやく終わり部屋を出ることとなった。今度は、大きな鉄の扉が開けられ中へ入って行くと、そこは広く大きな空間の留置場であった。場内は、就寝時間が過ぎていたらしく薄暗かったが、僕の目の前にははっきりと8つに分けられた鉄格子の牢屋が映っていた。右から2番目の部屋の扉が開けられ、中に入るとそこには2人の罪人が既に寝ていた。部屋は、畳が横向きに縦方向に3枚並んでおり、その畳に沿って布団が敷かれている。そして、一番奥にはトイレがある。僕は、その2人の真ん中に寝る事となった。場内は、強めの冷房が効いており毛布などを掛けないと少し寒いようにも感じた。布団の中に入り目を閉じ、ずっと彼女の事や今回の事件の事を思い返していたが、やはり涙が出てくる。しかし、長時間の取り調べや慣れない数々の動作によっぽど疲れていたのか、いつの間にか夢の中へと入っていった。そして、怒濤の1日は幕を閉じるのであった。
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