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「…でも、まだ、あんた美夜子ちゃんと付き合ってるんだね」 まだって、どういうことだろう。 そう思っていると… 「だって、あんた、別に美夜子ちゃんのこと、好きじゃないでしょ」 この人は、わかっていたんだ。 「…好きだよ、別に」 好きは、好きなんだよ。 「うん。わかってる。だから、別に反対はしないけど。でもね、翔伍。あの子は、大丈夫よ、きっと。だって、美咲(ミサキ)の子供だもの」 美咲というのは、美夜子のお母さんの名前。 母さんは、よく言うんだ。 美咲は強い人だからって。 あの優しそうな人が、どうして強いんだろうっていつも思っていた。 「でも、私も美咲も、子供達が結婚したりしたら嬉しいねーって話してたから、嬉しいんだけどね。でも、こうして、ここまで仲よくしてくれただけでも、十分嬉しいからね」 なんて話しながら剥いてくれたリンゴ。 とっても美味しいリンゴだった。
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