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五つ目の駅に降り立って、慣れた道を行くように迷いなく夫の足は運ぶ。
ふと、私は夫の前方に視線を移す。
人待ち顔の女性が夫を見つけた途端、柔らかく微笑んだ。
『ああ、このひとなんだ』
想像以上に地味なひとだと思った。なんとなくショック。こんな女に負けたの?
ただ・・・彼女は透き通るような白い肌をしていた。
化粧なんてしなくても綺麗な素肌。名前の通り、雪みたいに白かった。心の底から羨ましい。それこそ、全女性の憧れだ。
・・・もしかしたら、これが同僚女子のやっかみの原因なのかもしれない。
肩を並べて歩き出す二人は、ごく自然でお似合いだった。会話もお互いの目を見つめて穏やかに交わし合う。
私に対する態度と全然違うじゃないか。
15分ほど歩くと、二人はスーパーへ入って行った。あぁ、食材選びは楽しいよね。
私は出入口付近の生け垣に腰掛け、ぼぉっとしながら二人を待った。
『そうだ。写真、写真』
ハッとして、スマホをスーパーの出入口に向ける。傍から見たら、メールを打っているような素振りで。これがなかなか難しかった。
二人が出てきた。2枚しか撮れなかったが、あとで確認したらよく撮れていた。
探偵気分で、再び二人のあとを追う。
スーパーからはほんの2、3分で低層のマンションに着き、そこで初めて二人は手を繋いだ。
私はその写真も撮った。
そのすぐあとに灯りがついた部屋を確認し、私は家路についた。
この一連の行動の中、私の心を揺さぶったのはただ一つ。それは彼女の肌の白さだった。
あの白い肌は、夜の静寂の中で妖しく艶を増し夫と交わるのだ・・・。
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