向日葵

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(7) 瀬川雪菜は『女同士』という言葉の呪縛から逃れられずにいたらしい。 あれから、夫と連絡を取ることはなかった。 雪菜と会った日の夜、出張先の夫からの着信を待っていたけど、結局何もなかったのだ。 昨日、私から慰謝料を請求された雪菜は、一瞬驚いてはいたものの、当然の事態だと腹を括っていたのかもしれない。素直に『はい』と返事をした。 私は更に畳み掛けるように金額を告げた。200万という数字は世の相場かと考えていた。 そして私はこう付け足した。 『訴えは起こしません。会社にも。あなたが黙って払うなら』 温情などではなかった。大事になれば自分も傷つく。ただそれだけ。 でも雪菜は私に感謝していた。 そりゃ有難いに決まってる。あちらにしてみたらお金の問題ではない。不倫で会社を追われれば、派遣社員としてやっていくのは難しくなる。社会的に葬られるよりは、お金で解決したいところだろう。 私は最後に、夫とは今後会わないようにと伝え、私の個人口座のメモを渡してその場を離れた。 実のところ、夫と雪菜の関係が続こうが終わろうがどちらでも良かった。私との離婚が成立したら、また付き合ったらいいじゃないかとさえ思う。
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