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「浮気していることは知ってる。彼女にも会った」
「・・・いつ?」
いつだっていいじゃん。
「おととい」
それで合点がいったのか、夫は椅子に深くもたれ深いため息を吐いた。
きっと昨日も今日も雪菜からなにもないか、拒絶を感じたかしていたのだろう。帰宅時の機嫌の悪さから大方は察していた。
「・・・ごめん。別れるから」
私から目を逸らしたまま、夫は謝罪の言葉を投げた。文字通り投げられた気がする。
「謝ってもらってもね」
私は冷たく返した。早く納得しなよ。
「遊びだって。お前が夜の相手にならないから・・・溜まってたんだよ」
なんて奴。嘘にしたって、そんなことを言う男をどんな風に思えばいいんだ。
「とにかく、離婚してください」
私は決意の固さを込めて夫の合わない視線を追い続けた。
「・・・ちょっと、考えさせて」
そう告げると、夫は飲み差しのビールをそのままに、寝室に逃げ込んでしまった。
私には不可解でならない。この結婚のどこのなにが夫に執着させてるの?世間体?身内へのお体裁?
夫の親は、結婚した時には既に他界していて、弟がいるにはいるが外国に行きっぱなしで、私は一面識もなかった。
うちの実家と夫が、私以上の関係を築いているとは思えない。
『なんだよ、もう!』
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