向日葵

16/47

113人が本棚に入れています
本棚に追加
/48ページ
「浮気していることは知ってる。彼女にも会った」 「・・・いつ?」 いつだっていいじゃん。 「おととい」 それで合点がいったのか、夫は椅子に深くもたれ深いため息を吐いた。 きっと昨日も今日も雪菜からなにもないか、拒絶を感じたかしていたのだろう。帰宅時の機嫌の悪さから大方は察していた。 「・・・ごめん。別れるから」 私から目を逸らしたまま、夫は謝罪の言葉を投げた。文字通り投げられた気がする。 「謝ってもらってもね」 私は冷たく返した。早く納得しなよ。 「遊びだって。お前が夜の相手にならないから・・・溜まってたんだよ」 なんて奴。嘘にしたって、そんなことを言う男をどんな風に思えばいいんだ。 「とにかく、離婚してください」 私は決意の固さを込めて夫の合わない視線を追い続けた。 「・・・ちょっと、考えさせて」 そう告げると、夫は飲み差しのビールをそのままに、寝室に逃げ込んでしまった。 私には不可解でならない。この結婚のどこのなにが夫に執着させてるの?世間体?身内へのお体裁? 夫の親は、結婚した時には既に他界していて、弟がいるにはいるが外国に行きっぱなしで、私は一面識もなかった。 うちの実家と夫が、私以上の関係を築いているとは思えない。 『なんだよ、もう!』
/48ページ

最初のコメントを投稿しよう!

113人が本棚に入れています
本棚に追加