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「瑞希、雅文くんは元気か?仕事、大変なのか?あんまりこっちに顔出さないけどさ」
このセリフを待っていた。父か兄が毎回必ず言い出す。
私は神妙な顔つきをした。
「元気は元気。たださぁ・・・」
「どうしたの?なんかあった?」
勿体つける私の物言いに、母が不審がる。
「あのさ・・・ここだけの話だよ?私たち、別れようかと」
両親と兄はかなりショックを受けたようだった。
それはそう。離婚なんて、親族の中でも聞いたことがなかった。
巷に溢れる離婚話は、この人達にとっては対岸の火事。全くもって、他人事なのだ。
「うまくいってないのか?」
兄は無遠慮に尋ねてくる。ゴシップ好きだわ。
「だいぶ前からね。全然よ」
浮気のことはとりあえず黙っておくことにした。この人達に仲裁でもされたら困る。
「もう決めたのか?」「お母さん、雅文さんと話してあげようか?」「マジかよぉ」
私は困ったような表情で、
「まぁ、今はまだ、なんとかやってるから。ごめん、心配かけるよね」と取り繕った。
一同は、それを良い方に捉えた。まだ決まってないならなんとかなる、とでも。
これは今後の伏線みたいなものだった。若しくは、根回し。
いきなり離婚しましたなんてこと、うちの家族たちにはとても消化しきれないだろうから。
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