向日葵

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(14) オジさんの秘密というのはこうだ。 今でこそ、冴えない風貌で仕事ひと筋の中年男だが、元々は超エリートの方々が『先生』と敬うほどの経歴の持ち主という。 それがなぜ、出世コースに程遠い、この吹けば飛ぶよな末端の部署にいるのかという話。 10年ほど前、技術サポートセンターをも傘下となる組織の頂点にいたと言うから驚いた。我が職場の上の上のそのまた上。雲上の人だったのだ。 現在の状況となった元凶は、驚いたことに不倫だった。 不倫と聞いた時、私は不躾にも、オジさんの顔を穴が空くほど見つめてしまった。 若い部下と不倫をした。妻にバレそうになって別れようとしたが、揉めに揉めて、終いには家庭のみならず会社にも多大な迷惑を掛けてしまった。それでクビを言い渡された。 妻は、取締役社長の縁故だった。今はそのことが原因で離婚した。子供には一切会えてないという。 オジさんの転落の事情はわかった。 それにしても、よくもまぁ会社に残れたものだと感心したのは、この会社の懐の深さかと思いきや。 すると、そのあたりの事情をグループ長が付け加えた。 要は、オジさんが元々偉すぎて、周りのお偉いさんが尽く庇いクビは免れたのだそう。 不倫相手の、取引先にまで及んだストーカー的な行動により、実質的な損失が出たことを差し引いても余りあるほどの信頼関係ができていたということ。すごい人徳。 それでも社長の強い要請もあり、このような組織の末端に皮一枚で繋がった形。 「プライベートでは長や役のつく人達と今でも交流があるんだよ」 グループ長はまるで自分の自慢話のように、オジさんの私事を喋っていた。 「へえぇ」 私は、持ち上げるべきか引いていてもいいのか、判断に困っていた。 それを見て、グループ長がウハウハ笑い出す。 「その顔が見たかったんだよね。」 なによそれ。
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