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オジさんはひっきりなしに水割りを飲んでやり過ごしていた。きっと、いつもネタにされているんだと察した。
「大変でしたね」
私はやっとそう言い、オジさんを労った。
「それだけじゃない」
グループ長が言葉を続けた。
「えぇ?それ言うの?」
オジさんは、話して欲しくないようだった。
『いいからいいから』と、お茶目な風を装い、私の方へ身を乗り出すグループ長。
私も困ってしまった。
更にすごい話というのは、オジさん、実は億万長者なんだそう。
『えっ?』
億万長者と聞いて、さぞかし私の顔つきは、驚きと好奇に満ちた卑しいものに見えただろうと、後で反省したほど。
あまりにも俗っぽい反応に、グループ長は満面の笑みを零していた。
『しまったぁ』
家族と役職を失ったオジさんは、暇を持て余し、知人の勧めるがまま投資に精を出した。結果、資産は億を超え、未だ増え続けている。
なんて羨ましい。
「金なんてな、必要以上あったところでなんの有難みもないんだよ。誰かに使って初めて生きるってもんだ」
オジさんの含蓄のある言葉を冷やかすように、グループ長は『言ってみたいもんだなぁ、そのセリフ』とからかう。
もう、この人、うざい。
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