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深夜11時にやっとお開きとなって、私たちは解散した。
アパートの前に辿り着くと、ドッと疲れが湧き、もうお化粧を落としただけで寝てしまおうと思っていた。
ところが、アパートの前で、『あれ?』と思う人とバッタリ会った。
オジさんだ。あちらも驚いていた。
聞けば、向かいの(超豪華な)マンションに住んでいるとのこと。
私のアパートとオジさんのマンションは、ちょうど区の境界で、今まで少しも気がつかなかった。
それにしても、さっきスナックの近くで反対方向に別れたよね。
「尾治さん、どうやって帰ってるんですか?私は〇〇線だったんですが」
『あぁ』と、オジさんはそう言えばと言った風に答えた。
「瑞希さんは、〇〇線を利用してるのか。だからこんな近くに住んでいながら会うことがなかったんだな。僕は会社から少し歩いて、△△駅からバスで通ってるんだ。今夜は終バスに間に合わなかったからタクシーを使ったんだよ」
わかっていたなら、店から一緒にタクシーで帰ったのにねと付け足すオジさん。
オジさんがご近所さんだからと言って、何も問題はないと思えたから、さして気にもせずにいた。
本当に、運命なんて、人の縁なんてわからない。そんなことになるなんて・・・。
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