向日葵

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(16) 本採用の通知を手渡しする儀式(?)のため、よく通った人事部の研修室に久しぶりに出向くと、茜さんが『やったね』と唇だけで言い、飲みのジェスチャーを見せた。 私は笑顔で頭を下げてから、何度も頷いて見せた。 そうそう、茜さんとお祝いの飲みに行くんだった。忙しくて忘れていた。 その日の定時後、グループ長の誘いを断って、茜さんと駅前で待ち合わせた。 グループ長とオジさんとは、あれ以来、ちょくちょく飲みに行っていた。 グループ長は自分のプライベートを明かさないが、独身の私やオジさんと同等の自由さがあるみたい。あまり興味もないけど。 茜さんは、スラリとした美人ながら控えめなメイクで、好感が持てる装いの人。未だ独身を貫く、勤続20年のベテラン社員。 社内の人望厚く、特に女性からの並々ならぬ信頼と羨望を集めていた 。 私みたいな新参者と親しくしてくれるのはどういうわけなのか、当初はつい勘ぐってしまった。 そんな茜さんが、私と親しげに話をする度に、例の『縁故採用』疑惑も深まった。 私にはその噂を払拭できる交友関係がなく、なんとなく、そう言われることを否定できずにいた。
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