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茜さんとの夜は楽しかった。女同士で飲むのは久しぶりだった。
思えば、私の友達はみんな結婚と出産、子育てで忙しいとかで、疎遠になってしまった。
茜さんもそうらしい。
結婚だけならまだしも、子育てとなると時間の制約もあるし、何より話題が偏りがちになる。それでお互いに気を遣う。
友人らは、共感のない独身女との時間を割くことを選ばなくなっていったと茜さんは言った。
茜さんのような人も寂しさを感じていたんだ。
「茜さんは結婚しないの?」
私は率直に尋ねた。
茜さんは笑って、『できるならしたかったわよ』と答えた。
そして横顔のまま、『結婚するはずの人がいた。その人のことをまだ忘れられない』と言った。
その横顔が哀しげに見えて、私は言葉が出なかった。
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