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ある日の夜、アパートの前で再びオジさんに出くわした。
住んでいると知れば、そう意識が働くのだと思う。
もし知らないままだったら、アパートの前の人影をスルーしていた。
「今お帰りですか?お疲れ様です」
オジさん、今日は午後から出張だった。
「どうも。瑞希さんもお疲れ様」
そして、私が手にしていた食材の詰まったレジ袋を見て、『やっぱり自炊?』と尋ねた。
「一人なのに多いでしょう?2、3日分は買っておくんです。尾治さんは外食なんでしょうね」
そんなやり取りをしてから、2、3分立ち話をして、なんとなく食事に誘ってしまった。
オジさんは、一度帰ってからお風呂に入って、近所に食べに出ようと思っていたそうで。
手料理は久しぶりなんだそう。私も、誰かに作るのは久しぶりだった。
ご飯を食べながら、ビールを半分ずつグラスに分けて飲んだ。
なんか、オジさんとは自然に打ち解けていた。
後日の金曜日。出張に出ようとしたオジさんが、ふとなにかを思い出したように私を呼ぶと、この前のご飯のお返しにと食事に誘ってくれた。
グループ長は会議で不在。私は、なんだかグループ長をのけ者にするみたいで悪い気もしたけど、こういう機会は逃したらダメだと思う。野望を果たすためには。
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