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まずは証拠集め。話はそれから。
証拠と言えば携帯だ。夫は夜型で寝起きの悪い方だから、狙いは朝方。
日曜日の朝なら、前夜の様子から見て6時頃なら安全だろう。
私は目覚ましもかけずにピッタリ6時に目を覚まし、夫のガラケーを手に寝室を出る。
緊張感なく、キッチンでコーヒーを入れながらロックを解除した。暗証番号はとっくの昔に盗み見済みだ。こまめに設定を変えるような人ではない。未だにガラケーなのもそれを物語っている。
コーヒーカップと共にリビングに落ち着きながら、受信ボックスを半年前まで遡る。
彼女と思しき女性のフルネームは『瀬川雪菜』。
最初のメールは2月末だった。
『守山課長、昨日はありがとうございました。本当に助かりました。今度ぜひお礼をさせてください。瀬川雪菜』
『ふん。下心満載でなにか世話を焼いたわけね。ありがちだわ』
今、メールの内容全てを確認するつもりはなかった。メールのやり取り全部を私の携帯に保存する作業に没頭する。
他に、通話記録から相手の電話番号を確認した。
ガラケー相手なので時間が掛かり、少し焦りながら寝室に戻る。
夫が起き出すのは昼頃だから、まだまだ時間の余裕はあったのに。
夫婦の寝室は8畳ほど。夫が眠るセミダブルベッドは向こうの壁にぴったりつけていて、私のシングルベッドはこちら側の壁に。精一杯離したって、ベッドとベッドの間は大して広くもない。
私は今見たメールの内容が頭から離れず、なんとも言えない嫌悪感を抱いていた。
夫を汚らしいオヤジと感じる。
枕を壁際にずらし、体をできるだけ壁に寄せて目を閉じた。
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