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瀬川雪菜は夫の隣の部署で、事務の派遣社員だった。ブースが衝立てで隔たれているだけらしい。
それがわかったのはもう少し後だけど。
夫の携帯をチェックした翌日、私はパートを休んだ。
一日掛かってメールの内容を読み、メモにまとめた。
細かい経緯は不明だが、なんらかの手助けを受けた彼女が夫に感謝し、お礼に食事でもということになったようだった。
不思議なのは、彼女が始めから夫に対して攻め気味だったこと。
夫は食事は受けたが、自ら関係を迫ることはなかったようだ。
だが、その後2週間のメールのやり取りののち、二人は関係を持った。
その時のメールはこうだ。
『守山課長、昨夜のことに課長が責任を感じる必要はありません。私は、私の気持ちで課長とそうしたいと思ったのです。ずっとそうなりたかったから。雪菜』
この一文を読んだ時、胸がキュッと締め付けられた。まるで自分が恋をしたかのように。
彼女は夫の浮気相手なのに、なんでかその感情に共感してしまった。
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