第1章

2/13
前へ
/13ページ
次へ
腕に飛び込んできた梓の肩を掴んで、留める。 揺らぎの大きさに、彼女の勢いを改めて感じる。 思ったより力を入れていたらしい。 「ごめん」 痛かったかと、つい漏れた言葉に、梓の瞳が見開かれた。 肩が強ばっている。 ああ、違うんだ。 僕はまた間違えた。 そんな顔をさせたいんじゃない。 「待って。梓、聞いてくれますか。」 俯いてしまった彼女の手を取る。 「僕は……言葉足らずだと言われます。 自覚もあります。 言葉を探しているうちに傷つけてしまう。 大切だと思っていた友人が、離れていってしまったこともあります。 でも、梓を失いたくありません。 聞いてくれますか」 ゆるゆると顔を上げてくれたことに、ひとまずホッとする。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加