第1章

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梓の言葉に、表情に、僕の鼓動は反応している。 「ありがとう、梓」 そう口から漏れていた。 まっすぐに僕を見据えて『好き』と言われて、つい言ってしまった。 そうしたら真っ赤な顔で飛び込んで来るので。 続けようとした 『でも……』 を飲み込んでしまった。 受け止めて、抱き締めてしまえばどうなるかわかっていたからこそ。 待って欲しかった。 「今のままでは、ダメなんです。 梓じゃなくて僕が。 待ってて。 変わりたいんです。」 じっと僕の目を見て、頷いてくれた梓は。 泣くのをこらえるように 笑った。 ズキンと心の深い所が痛んで、こんな我が儘を言ってしまったことが今さら怖くなった。 冷たい風に髪を遊ばせて並んで歩く。 いつもより饒舌な梓はカフェでケーキを迷い、友達のペットの話をしてくれた。 そして、時折スカートを握っていた。
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