第1章

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■ 「で、何で落ち込んでるわけ? 愛しの女子高生と上手くいってるのに」 講義室に入った途端、座るように促されて取り囲まれた。 なぜ僕と梓の事がここまで知られているかというと、元凶は目の前でニヤニヤと笑う本野という男だ。 梓が通りがかるのを待って河原でスケッチしているのを見つかって、その理由がばれて。 ストーカーかよ、と言われたので否定しようとして。 そんな下心はなく梓が中身もきっと純粋で綺麗で描いてみたいだけだと、つい力説してしまった。 翌日には、ストーカー認定が広まっていた。 なので仕方なく。 仕方なく、話をしたとか親しくなった事も定期的に洩らしていた。 ストーカーじゃない、断じて。 好きって言ってくれたし。 思い出して、胸が痛くなる。 重症だ。 梓、ごめん。 「バレンタインは?デートした?」 挨拶程度しかしたことのない女子に訊かれる。 個人情報って、何だろうね。 うんざりして、頷く。 「課題が終わるまで、会わないって僕から言った」 女子たちが、驚いている。 本野が 「ああ……」 とため息をついた。 「またお前、面倒くさいこと考えてんだろ」 それは否定しない。 梓を傷付けて何をしているんだろうと思う。 講義も上の空で、少しでも課題に時間をかけたいと思った。
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