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ただじっと男が立ち去るのを待つしかなかった。 そして銃声が鳴った。 しばらく間があって、もう一発。梅里は心の中で、棚橋に手を合わせた。 ガサガサと車を漁る音がした。 くぐもってはいるが、小瓶のぶつかり合う音。 地面を踏みしめる音。 木の枝を掻き分ける音。 それらの音が小さくなったのを確認してから、梅里はゆっくりと顔を上げた。 男がダンボールを抱えて、斜面を登っている。 足場の悪さに、よろけながら時間をかけて崖の上まで登っていった。 ドラッグのダンボールはもうひと箱ある。 男は二箱のドラッグを回収して、車で走り去るつもりなのだろう。 だから、男がもうひと箱を運び終えるまで、しばらく待たなければここからは動けない。 梅里は、じっと息を潜めて待った。 しかし、男は道路に上がったきり、崖下の車へ戻ってくる気配がなかった。 おかしい。 なぜ下りてこないんだ。
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