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赤坂は、男の腕を振り払って、仰向けに寝転がった。 覆いかぶさるように男が何かを叫んでいたが、もうどうでもよかった。 アゲハヒメバチだって? それは何の話だ? 誰のことだ? 喉からは、まだ血が流れ落ちていた。 流れ落ちた血が、後頭部のコンクリートへと広がる。 薄れ行く意識の中で、その真っ赤な血黙りが、不思議にも真っ赤なカーネーションの花びらに見えた。 もちろん、そんなところにカーネーションが咲いているわけはない。 自分でもわかっていた。 それでも赤坂には、その血黙りがカーネーションに見えたのだ。 そして、混乱した意識の中で、ある想いが浮かんだ。 こんなにたくさんのカーネーションを、母さんは喜んでくれるだろうか? 〈了〉 BGM: OCEANLANE 『Answer To This Flower』
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