202人が本棚に入れています
本棚に追加
赤坂は、男の腕を振り払って、仰向けに寝転がった。
覆いかぶさるように男が何かを叫んでいたが、もうどうでもよかった。
アゲハヒメバチだって?
それは何の話だ?
誰のことだ?
喉からは、まだ血が流れ落ちていた。
流れ落ちた血が、後頭部のコンクリートへと広がる。
薄れ行く意識の中で、その真っ赤な血黙りが、不思議にも真っ赤なカーネーションの花びらに見えた。
もちろん、そんなところにカーネーションが咲いているわけはない。
自分でもわかっていた。
それでも赤坂には、その血黙りがカーネーションに見えたのだ。
そして、混乱した意識の中で、ある想いが浮かんだ。
こんなにたくさんのカーネーションを、母さんは喜んでくれるだろうか?
〈了〉
BGM:
OCEANLANE
『Answer To This Flower』
最初のコメントを投稿しよう!