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その真意はわからなかった。
この質問は、何を意味しているんだろう。
皆目見当がつかない。
ただ、目を逸らすことだけは、はばかられるように思えた。
梅里は、この質問に返事をするかわりに、視線を合わせたまま肩をすくめてみせた。
教授は、ニヤリと口角を持ち上げると視線を梅里の左隣に向けた。
「おまえはどうだ」
梅里の左隣には、痩せこけた中年男が座っていた。
棚橋という名の、見るからにうだつのあがらなそうな、小柄な中年男だ。
棚橋は突然話の矛先を向けられて、驚いたように背筋を伸ばした。
そして細く筋張った首を、小刻みに横に振った。
「そうか、知らんか。じゃあ、おまえは」
続いて教授の問いかけは、梅里の右隣へと移動した。
季節は夏だというのに、黒いジャケットに身を包んだ男へ。
初めて見る顔だった。
もちろん、名前は知らない。
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