1

3/19
前へ
/100ページ
次へ
その真意はわからなかった。 この質問は、何を意味しているんだろう。 皆目見当がつかない。 ただ、目を逸らすことだけは、はばかられるように思えた。 梅里は、この質問に返事をするかわりに、視線を合わせたまま肩をすくめてみせた。 教授は、ニヤリと口角を持ち上げると視線を梅里の左隣に向けた。 「おまえはどうだ」 梅里の左隣には、痩せこけた中年男が座っていた。 棚橋という名の、見るからにうだつのあがらなそうな、小柄な中年男だ。 棚橋は突然話の矛先を向けられて、驚いたように背筋を伸ばした。 そして細く筋張った首を、小刻みに横に振った。 「そうか、知らんか。じゃあ、おまえは」 続いて教授の問いかけは、梅里の右隣へと移動した。 季節は夏だというのに、黒いジャケットに身を包んだ男へ。 初めて見る顔だった。 もちろん、名前は知らない。
/100ページ

最初のコメントを投稿しよう!

202人が本棚に入れています
本棚に追加