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あれから二年の月日が経った。 中野に安アパートを借り、日雇いのバイトで食いつなぐ生活。 夜は池袋や新宿へ出かけ、誰彼かまわず喧嘩をふっかけた。 ヤクザが出入りする店へ入り浸り、ひたすら名前を売って歩いた。 いつしか、ドラッグの売人とも面識を持つようになり、ようやく教授へたどり着くことができた。 一年前くらいから教授の仕事を手伝うようになり、懸命に米搗き飛蝗を演じてきた。 時々、気持ちが萎えることがある。 自分のしていることに嫌気が差し、逃げ出したくなるのだ。 しかしそんな時には、佐々木先輩や猿渡課長の顔を思い起こし、自分を奮い立たせるようにしている。 皆が見守っていてくれると思うと、熱い信念を取り戻すことができるのだ。 今回、教授が指示した仕事は、今までになく大量のドラッグを取り扱うものだった。 昨夜の打ち合わせでは、裏切り者の話がのぼっていた。 そう、教授が言ったように、教授に寄生する寄生蜂アゲハヒメバチ確かにいるのだ。 それはまさしく自分のことだった。 だが、気づかれてはいない。 きっと教授は、試そうとしているに違いない。 自分が裏切り者かどうか。
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