202人が本棚に入れています
本棚に追加
荒い息を懸命に殺して、相手の出方を待つことにした。
ころころと小石の転がる音がする。
何かが上のほうで動いているのだ。
木の枝が折れる音とともに、地面を踏みしめる音も聞こえた。
間違いない。
誰かが下りてきた。
音が次第に近づいてくる。
まさか、ここに隠れていることがばれたわけではあるまい。
梅里は、無理やり呼吸を止めた。
こんな時には、心臓の鼓動さえうるさく感じる。
足音は、梅里の右側を抜けていった。
ほっと胸をなでおろす。
金属が擦れる音が響き、声が聞こえた。
車のドアを開けたのだろう。
そして、棚橋の姿を見て何かを言ったのだ。
小さな声で聞こえなかったが、短く吐き捨てるような言葉だった。
荒い息遣いに合わせて、布が擦れる音がする。
そしてドスンと何かが地面に落ちた。
いったい何をやっているんだ。
梅里は、静かに頭を持ち上げて、車の方へと視線を向けた。
最初のコメントを投稿しよう!