3

20/26
前へ
/100ページ
次へ
長髪で、整った顔立ち、すらりとした体型、黒いジャケット。 あいつだ。 中華料理店で席を隣にした、赤坂という男だ。 この走行ルートを提案した男。 そうか、これは監視カメラを避けた走行ルートであると同時に、荷物を奪い取るためのルートでもあったのか。 教授が危惧していた裏切り者の正体は、あの男だったのだ。 嵌められた、完全に。 いや、だが待て。 この一年間、教授と仕事をしてきて、あいつを見たのはこのヤマが初めてだ。 しかし、教授は複数回に渡って荷物を横取りされたと言っていたはずだ。 だとすれば、裏切り者は他にいるのだろうか。 それとも、この男と共謀している誰かがいるのかもしれない。 男に襲い掛かり、ねじ伏せて真実を聞きだしてやろうか。 首は痛めているものの、腕力には自信があった。 あんな華奢な男に負けるわけがない。 男は、棚橋を大きな岩に持たれかけさせていた。 注意は完全にそがれている。 今がチャンスだ。 梅里が飛び出していこうと身構えた瞬間、男がポケットから拳銃を取り出したのが見えた。
/100ページ

最初のコメントを投稿しよう!

202人が本棚に入れています
本棚に追加