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梅里はどきりとした。 自分の心の内を、赤坂という男が口にしたのだ。 どうなってるんだ。 なぜ、あいつが。 いや、聞き間違いだ。 何か別な言葉を聞き間違えたにちがいない。 冷静になれ。 続けて、男の絶叫が聞こえた。 声が割れ、何を言っているのかはっきりとは聞き取れない。 ただ「躊躇するな」という言葉を呪文のように繰り返しているようだ。 そして、男が動き始めた。 周囲の枝を引きちぎっては、棚橋に投げつけている。 まったくわけのわからない行動だった。 男が枝を引きちぎりながら、草むらへと近づいてきた。 梅里は慌てて伏せた。 男の足音が頭上に迫ってきたが、ほどなく遠のいていった。 枝を投げつける音が止んだ。 男は何かをつぶやいている。 梅里は身を伏せたまま、動かなかった。 いつまたあの男が動き出すのかわからない。
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