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もう、五分は経っているだろうか。 休憩しているにしても、長すぎやしないか。 何か予想もしないことが起こっているのかもしれない。 ここは、意を決して登ってみるしかないか。 だがその途端、男が下りてきたならば、逃れる術はない。 梅里が登るか否か迷っているうちに、十分が経過した。 さらに五分が経過したところで、腹をくくることにした。 もう登るしかない。 ここでじっとしていてもしかたがない。 梅里は、ゆっくりと体を持ち上げ、できるだけ物陰に隠れるようにして崖を登っていった。 崖を登りきる直前で、足に何かがぶつかった。 木の枝に隠れてはいるものの、それはドラッグの入ったダンボール箱だった。 なんでこんな所に置いていったのだろう。 首をかしげながら、斜面を登りきった。 道路には誰もいなかった。 しかも、男のSUVは道路に放置されたままだ。 どういうことだ。 男は何処へ消えたんだ。なぜ車を置いていったんだ。 なぜ荷物を置いていったんだ。 梅里の鼻を、独特の臭気がくすぐった。
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