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梅里は車のキーをもてあそびながら言った。 「その車に乗って、新潟まで日本縦断ドライブか。簡単な仕事だな。任せてくれ。ただ、心配事がひとつある。車から足がつくってことはないのか」 「車の手配は彼がしてくれたわ。赤坂、あなたから説明してあげて」 女性秘書はあごで梅里の右隣を指した。 黒いジャケットを着た男。 男は下唇をさすりながら、終始無言で教授の話を聞いていた。 年齢は二十代半ばだろう。 スラリとした体型で、身長も高く、なかなか顔立ちの整った男だ。 赤坂と呼ばれた男は、やおら口を開いた。 「車から足がつくことはない。関西から用立てた盗難車だから」 梅里は鼻を鳴らし、赤坂に食ってかかった。 「盗難車だってぇ? 冗談じゃない。盗難車が一番やっかいだ。警察の盗難登録にナンバーが載っていれば、見つかり次第、後を追いかけられて停められて終わりだ。車内を調べられて、荷物を引っ張り出されて、その場で御用だ」 「それはない。ナンバーは取り替えてある。二年間置きっぱなしの放置自動車からいただいたものだ。陸運局の封印も綺麗に再現されている。心配ない」 赤坂は、さらりと答えた。
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